カルティエ「タンク アン ギシェ」:時を窓から覗く、1928年の未来
指針を持たず、時を“窓”から読み取る——
1928年、カルティエが発表したタンク アン ギシェ(Tank à Guichets)は、当時の常識を覆す奇想天外な時計だった。
そして2025年、この最も古く、最も稀少なタンクが、プライヴェ・コレクション(Privé Collection)の一員として、20年ぶりに現代に蘇った。
🕰️ カルティエコピー時の表示:跳ね字と回転窓の二重奏
- 上部窓:跳ね字式(ジャンピングアワー)——瞬時に時間切り替え
- 下部弧状窓:回転式ミニッツディスク——滑らかに分を表示
- 窓枠:ダイヤモンドカット+鏡面ポリッシュ——光を捉えて細やかに輝く
「Guichets」とはフランス語で“小窓”の意。
この名は、銀行の窓口や駅の改札を連想させるが、
ここでは“時間の断片を垣間見る孔”として機能する。
特に注目すべきは、ゴールドケース仕様では文字色がグリーンになる点。
これは1928年初代モデルへのオマージュであり、当時の夜光塗料の色調を再現したものだ。
📐 デザイン:1928年への忠実な回帰
- ケース形状:完全フラット(側面に突起なし)
- リューズ位置:12時位置(従来の3時位置から復元)
- サイズ:37.6 × 24.8mm(実質的な着用感は円形35~36mm相当)
- 厚み:わずか6.0mm——ロレックスのムーブメント1枚分と同じ薄さ
1996年・1997年・2005年の復刻版では、現代的な操作性を優先し3時リューズを採用していたが、
今回のモデルは初代の純粋なフォルムを完全再現。
それは、“歴史を飾る”のではなく、“歴史を生きる”という姿勢の表れだ。
⚙️ 9755 MC ムーブメント:伯爵との協奏
心臓部は、伯爵(Piaget)をベースに、カルティエが開発した9755 MC 手巻きムーブメント。
- 厚み:わずか2.1mm(跳ね字モジュール追加後も全体で4.2mm)
- 動力備蓄:約43時間
- 装飾:円弧形ブリッジ+手彫りベベル+青焼きネジ
カルティエと伯爵はともにリシュモン・グループ傘下。
この協業により、超薄ムーブメントの性能と信頼性が保証されている。
💎 2つのヴァージョン:標準版と限定版
モデル ケース素材 価格(中国) 生産数
標準版 イエローゴールド/ローズゴールド/プラチナ 約348万円(金)/400万円(Pt) 非限定
傾斜窓限定版 プラチナ 約440万円 200本限定
傾斜窓モデルは、上下の表示窓が右へ15度傾斜。
これは1920年代の特殊注文モデルを再現したもので、
装着時の視認性を考慮した、極めて稀なバリエーションだ。
💎 編集部コメント:
奇形は、単なる変形ではない――それは時代の鏡だ
「なぜ他のブランドの奇形時計は価値がなく、カルティエだけが高いのか?」
その答えは簡単だ——
カルティエの奇形は、歴史的文脈の中に生まれた“必然”だからだ。
- 1917年:戦車のフォルムからタンクが誕生
- 1920年代:胸針からクロッシュ(Cloche)が進化
- 1960年代:事故現場の歪んだ時計からクラッシュ(Crash)が生まれる
どれもが、“時代の空気”を結晶化させた作品。
失敗作はすでに淘汰され、残ったのは“勝ち残った美学”のみ。
タンク アン ギシェは、
そんなカルティエのDNAが最も濃く詰まった、
プライヴェ・コレクションの真髄である。

